相続
忘れられない相続のご依頼
数年前に、Tさんから、20年前に他界した両親の相続の相談がありました。
20年前、相続人である兄弟と話し合いをしたものの、うまくいかず、
「お前がそんなに欲深い人間だったとは思わなかった」と他の兄弟から言われ、
絶縁されたという経緯がありました。お歳暮などを送っても送り返され、完全に兄弟仲が断絶している状況でした。
当時の自分は「親から引き継いだ土地を守ることが大切なことだと思っていた。だから地元に残った自分が相続することが当たり前だと思っていた。」
「でも本当に大切なことは違った。兄弟仲の良さこそが、自分たちの宝だった」
Tさんはそう話され、私の前で涙を流し、「土地はもういらない、兄が欲しいと望むのなら全て渡して構わない。」とおっしゃられました。
正直、最初はこのような相談は初めてで戸惑いました。
大抵は、「自分名義に変えてほしい」という相談だからです。
でも、第三者だから伝わるものがあるかもしれないと思い、悩みに悩んだ末、私から兄に手紙を書かせていただきました。
ひと月ほど経った後、Tさんの甥から返信があり、話し合いに応じてくださいました。
「父は普段、自分のことは自分で決め、誰にも相談しません。今回のように父から手紙を見せ、事の経緯を話すことなど初めてです。」
「父は90歳を超えていて、熊本に行くことができないので、私が代理で伺います」と話され、本当にお見えくださり、そこからトントン拍子で話がまとまりました。
土地はTさんが相続することになり、当時どうして兄があそこまで怒ったのかの真相も甥から伝えられ、20年もの期間を超え、兄弟が和解されました。
何よりうれしかったのは、兄弟の交流が再開し、「電話で兄と話ができた」と満面の笑みでTさんが話してくれたことです。
お墓参りにも同席させていただき、墓前でご両親に報告されるTさんの姿を見て、感無量でした。
相続で揉めると、人の人生にここまで深い傷を作るということを感じましたし、時間が解決のきっかけになることも実感させていただきました。
20年もの間、「なぜこんなことになったのか」とTさんご兄弟が悩み苦しみ、深い後悔をお持ちなこともやり取りをさせていただく中で感じました。
私自身司法書士として相続の仕事のあり方を考えさせられるものでした。
この仕事は、法的な解決だけでなく、人と人の縁や絆も再生できるという希望を見せていただいたご依頼でした。
自分がこの仕事を通じて何を目指したいか、それを感じさせていただいたご依頼でした。
本当に解決できてよかった。そう思う忘れられない依頼です。


